(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)
・ヘルニア(hernia)とは、体内の臓器などが、
本来あるべき部位から脱出した状態を指します
・体腔内の裂隙に迷入したものを内ヘルニア、
体腔外に逸脱したものを外ヘルニアと呼びます
・腹部の内臓に多くみられ、例えば腹壁ヘルニアは、
腹壁に生じた裂け目から腹部の内臓が腹膜に包まれたまま
腹腔外に脱出するものです
・一般的に多いヘルニアは、鼠径ヘルニア(脱腸)、
臍ヘルニア(でべそ)、椎間板ヘルニアなどです
・また、嵌頓ヘルニア(かんとんへるにあ)は、
脱出した臓器などが脱出穴で締め付けられた状態を指します
締め付けられた状態が長期に及ぶと、血液循環障害により
脱出した部分が壊死ないし壊疽に至る場合があります
多くは激痛を伴います
■ヘルニアの症状
・ヘルニアと一口に言っても、どこに発生するのかで
まったく違った症状を呈します
・頚椎椎間板ヘルニア
・脱出型椎間板ヘルニア
椎間板の周りに位置する繊維輪(中にある髄核を保護する軟骨)に
ヒビが入り、柔らかい髄核がそこから脱出したヘルニアです
・椎間板ヘルニア
長期間の圧迫に耐えかねた髄核が繊維輪を押し出し、
次第に変形させたもので、変形した繊維輪が突出し、
神経を圧迫して症状がでます
・腰椎椎間板ヘルニア
・脱出型椎間板ヘルニア
椎間板は、柔らかい髄核(ずいかく)を、硬い繊維輪(せんいりん)で
包んで保護する形になっています
繊維輪は硬い事は硬いのですが、あまり無理をさせると
ヒビが入ることがあります
そのヒビから髄核が外に脱出してしまったものを脱出型と呼びます
大抵はヒビが入った瞬間に脱出も起こるので、急激な痛みなどを
伴うのが特徴ですが、膨隆型に比べると症状の改善が早いと
言われています
・椎間板ヘルニア
例えばずっと同じ姿勢でいると、腰椎はいつも同じ重量を受け続けます
すると、髄核は上からの重量で押され続け、繊維輪に圧迫を加えます
やがて、圧迫に耐えかねた繊維輪の一部が変形して突出します
この突出部分が脊髄の神経を圧迫することによって、
痛みなどの症状を発症し、これを膨隆型と呼びます
繊維輪そのものが変形してしまうので、長期化することが多いのですが、
圧迫量は脱出型より少ないので症状が弱い特徴があります
・横隔膜ヘルニア
・外傷性横隔膜ヘルニア
横隔膜は、呼吸のために胸の気圧を管理しています
つまり、膜が下がると空気を吸い込み、上がると空気を吐き出すのです
ところが胸に強い打撃を受けると、排気が間に合わずに
横隔膜そのものが裂けることがあります
横隔膜が裂けると、今まで横隔膜によって区切られていた臓器が
はみ出ることがあり、これを外傷性横隔膜ヘルニアと呼んでいます
・傍胸骨孔ヘルニア
傍胸骨孔ヘルニアは、本来しっかりと胸骨にくっついているはずの
横隔膜のつながりが弱く、そこに臓器が侵入してくることによって
起こるヘルニアです
自覚症状も少なく、治療も簡単なのでさほど心配は要りません
・ボックダレック孔ヘルニア
ボックダレック孔ヘルニアはほぼ先天性でしか発見されません
しかし時々、生まれたときはなんともなかったのに成長してから
強い咳をしたり、胸に打撲を受けたりすると発症することもあり、
これを遅発性といいます
このボックダレック孔ヘルニアは、新生児がすぐに呼吸困難などの
症状を呈してしまうと、半数は予後不良を起こす、
かなり怖いヘルニアです
しかし、遅発性であれば、すみやかに手当てを受ければほぼ助かります
・食道裂孔ヘルニア
・滑脱型食道裂孔ヘルニア
胃は食道に比べて膨らんでいるので、普通は食道裂孔からはみ出す
ことがないのですが、食道裂孔の穴がゆるい場合は引っ張られて
はみ出てしまいます
滑脱型食道裂孔ヘルニアは、胃がまっすぐはみ出てきたものです
食道裂孔ヘルニアの大半がこの滑脱型です
あまり大きな症状が出ることは少ないのですが、
合併症を併発しやすいので注意が必要です
・傍食道型食道裂孔ヘルニア
食道裂孔ヘルニアの全体のうち、1割程度と数は少ないのですが、
滑脱型よりずっと厄介なのがこの傍食道型食道裂孔ヘルニアです
これは胃の一部が食道のわきを通った状態で横隔膜に挟まれるため
出血したり、逆に血が巡らなくなったりするなど滑脱型より
重い症状を起こしやすいヘルニアです
・混合型食道裂孔ヘルニア
傍食道型ヘルニアよりさらに症例は少ないのですが、
上で紹介した両者が混合された形で出てくるタイプのヘルニアです
・鼠径ヘルニアと臍ヘルニア
・鼠径ヘルニア
鼠径(そけい)は難しい字なのですが、足の付け根の、
特に内側の部分を指します
この鼠径や、下腹部などに起きるヘルニアを鼠径ヘルニアと呼び、
若年層か高年齢層におきやすいヘルニアです
若年性(先天性)と後天性のものでは、その原因が変わります
男性の場合、脱出した臓器は主に“いんのう”に飛び出るため、
袋が大きく膨らみ俗に「脱腸」と呼ばれています
女性の場合、または男性でも部位によっては下腹部にポコッとした
膨らみが出来ます
この膨らんだ部分によって鼠径ヘルニアは細かく4つに分けられますが、
治療方法や症状には変わりありません
通常飛び出た臓器は手で優しく戻してあげれば、
そのまま戻るのですが、たまに戻らなくなってしまうことがあります
これを嵌頓(かんとん)ヘルニアと呼びます
すると血流が止まり、腸がしんでしまうことがあるため、
大変危険です
こうなったらすぐに病院で治療を受けなくてはなりません
・臍ヘルニア
へその緒を臍帯(さいたい)と呼びます
生まれたての赤ん坊はこの臍帯でお母さんとつながっていたわけで、
言わば外界との連絡通路だったわけです
そのため、この部分はもともと筋肉や脂肪が少なくて開放的なので、
ここから腸が脱出してしまうヘルニアが起こります
これが臍ヘルニアで、俗称「でべそ」です
鼠径ヘルニアに比べると嵌頓ヘルニアになる可能性は低く、
ほとんどが筋肉の発達と共に自然に治ってしまうものなので、
さほど心配は要りません
ただし、でべそを子供が引っかいたりしないように、
保護者のほうが観察する必要があります
臍ヘルニアは普通1〜2歳くらいまでに治るものですが、
もしそれまでに治らない場合でも、手術で治すことができます
・脳ヘルニア
脳は全ての感覚を握っているだけに、出血の位置や大きさ、
方向などといった要因によって実にさまざまな症状を見せます
まずは脳がずれる前(脳圧が高まっている状態)の症状だけでも、
痛み、意識を失う、判断力がなくなる、めまい、吐き気、嘔吐、けいれん、
まひ、瞳孔が光を追えなくなるなど、恐ろしい症状がめじろ押しです
さらに悪化して脳がずれると脳ヘルニアになるのですが、
このずれる先は大抵脊髄部分の大孔といわれる部分
(ここだけは脊髄とつながっているので孔があります)になります
悪いことにずれた先には呼吸など自律神経をつかさどる部分があるので、
脳ヘルニアを起こしてしまうと、この部分を圧迫して
自発呼吸困難(じはつこきゅうこんなん)や脈拍異状などを起こします
さらに悪化すれば呼吸困難から呼吸停止にまで至ります
他のヘルニアは、ヘルニアという症状から痛みが発生するなど、
初期症状であることがほとんどなのですが、脳ヘルニアに関して言えば、
脳圧が高まった末の最終段階といえる症状です
つまり、ヘルニアが発生してから容態が悪化していくのが他のヘルニアなら、
脳ヘルニアは容態が悪化した最後におきるヘルニアということです
大変に危険なものであるということを忘れないでください
ヘルニアの衝撃写真!